長年の海外生活後、外国語能力をかわれて、日本で仕事を得たAさん。日本語はもちろん、日本人としてごく自然にふるまえます。しかし、職場では、“常識”がないとか、自己主張が強すぎる、態度がでかい、あやまらない、などと批判されてへこむことが多い。こんなAさんは、行動パターンは日本人でも、心的態度は西洋人、つまり「外は黄色、中は白」のバナナ。
一方、日本で生まれ育ち、大学生になってから海外に来たBさんは、外国生活の中で、言語を習得し、行動パターンをまねて、周りに合わせることはできるようになっても、情緒面では、そこまで変わっていない。周りに批判されることこそ少なくても、自分自身の中で、違和感や寂しさを感じます。行動面では西洋人でも、内面は日本人、「外は白、中は黄色」のゆでたまごです。
外見と中味が違うために生じるバナナとゆでたまごの苦労は、外国暮らし経験者なら、多かれ少なかれ、共感できるところだと思いますが、バナナとゆでたまごには、苦労だけがあるわけではありません。たとえば、みなさんの周りに、日本語が上手なだけでなく、態度や雰囲気まで「日本人以上に日本人!」な、外は白でも中は黄色い外国人がいませんか。たいてい、日本人の間で人気者で、好意を持って接せられている「外国人ゆでたまご」です。
ところでこの図をご覧ください。Tobe Skutnabb-Kangasという学者は、バイリンガルの子供たちの言語発達を蓮の花にたとえ、母語がしっかり根をはっていると、その根を基盤にして、第二言語も発達すると言っています。逆に、しっかり根がはられていなかったり、根が切られてしまうと、文字通り、根なし草になって、たよりなく浮遊することになってしまいます。
このモデルは、子供の言語教育上の指針となるだけでなく、おとなになって外国で生きていく上でも参考になると思います。
根を切られた根なし草としてではなく、日本人としての価値観や文化を基盤にしながら、さらにもうひとつ別の花を咲かすという欲張りなプロジェクトの達成をめざし、たたかれるバナナや、さびしいゆでたまごのマイナスイメージを、プラスにかえていきましょう!
※この記事は、「ストックホルム日本人会 会報2013年春号」に掲載した内容を一部改変したものです。